税理士との顧問契約は、日々の経営活動の円滑化や将来計画の実現に向けた重要なパートナーシップの証となります。
その基盤となる契約書は、双方の権利義務を明確にし、長期的な信頼関係を築く上で不可欠な存在です。
どのような契約形態が存在し、どのような項目を網羅すべきか、そして契約締結前にどのような点を確認すべきかを知ることは、安心して税理士との伴走を始めるための第一歩となります。
今回は、顧問税理士との契約書に関する網羅的な情報を提供し、円滑な契約締結をサポートします。
税理士との顧問契約書の種類
業務範囲に応じた契約形態
顧問税理士との契約には、提供されるサービスの内容によっていくつかの形態が存在します。
最も一般的なのは、月次での巡回監査、記帳指導、月次試算表の作成、経営相談などを包括的に行う「月次顧問契約」です。
これに対し、決算・申告業務のみを対象とする「決算・申告契約」、あるいは記帳代行を専門に行う「記帳代行契約」など、特定の業務に特化した契約形態もあります。
また、税務調査対応や相続対策、M&Aといった特定のプロジェクトに対するスポット契約も存在し、自社のニーズに最も合致する業務範囲を明確に定義した契約を選択することが重要です。
料金体系に基づく契約区分
税理士との顧問契約における料金体系は、契約内容の性質を反映し、いくつかの区分に分けられます。
一般的なのは、月々の顧問料が固定されている「固定報酬制」であり、提供されるサービス内容に応じて月額が設定されます。
これとは別に、決算・申告業務に対して別途料金が発生する「決算料」が加算される場合が多く見られます。
さらに、相談件数や作業時間に応じて料金が決まる「時間報酬制」や、特定の成果達成時に報酬が発生する「成果報酬制」(ただし、税理士業務では限定的)といった体系も存在します。
契約書には、これらの料金体系、具体的な金額、および追加業務が発生した場合の算定方法などを明記し、予期せぬ費用の発生を防ぐことが肝要です。

顧問税理士契約書に含めるべき項目は?
提供される業務内容の詳細
顧問税理士契約書において最も重要視すべき項目の一つが、具体的に提供される業務内容の詳細な記載です。
月次巡回監査の頻度や範囲、記帳代行の対象となる範囲(仕訳入力のみか、証憑整理まで含むかなど)、試算表の作成時期と内容、税務相談の回数や時間、経営アドバイスの有無やレベルなどを、曖昧さを排して詳細に定義することが求められます。
これにより、税理士側は期待される役割を正確に理解し、依頼者側は提供されるサービスの内容を具体的に把握できるようになり、将来的な認識の齟齬やトラブルを防ぐことに繋がります。
報酬額と支払い条件
契約書には、税理士に支払う報酬額とその支払い条件を明確に定める必要があります。
月々の顧問料、決算・申告料、その他のオプションサービスに対する料金などを具体的に明記し、消費税の取り扱いについても明確にしておくことが重要です。
さらに、支払い期日、支払い方法(銀行振込、口座振替など)、支払い通貨、そして万が一支払いが遅延した場合に適用される遅延損害金についても、具体的に規定しておくことで、金銭的なトラブルを未然に防ぐことができます。
実費(交通費、通信費、印紙代など)の精算に関する取り決めも、別途明記しておくことが望ましいでしょう。
責任範囲と免責事項
税理士は専門家として高度な注意義務を負いますが、契約書にはその責任範囲と免責事項についても明確に規定しておくことが不可欠です。
税理士が負うべき一般的な注意義務(善管注意義務など)の範囲を定義するとともに、依頼者側の情報提供の不備、指示の誤り、あるいは予見・防止が困難な外部要因によって生じた損害については、税理士の責任が及ばない旨を明確にしておくことが一般的です。
これにより、予期せぬ損害発生時における双方の責任範囲が明確になり、無用な紛争を避けることができます。

顧問税理士契約で確認すべき事項は?
担当税理士の専門性と相性
顧問税理士との契約にあたっては、担当となる税理士の専門知識や経験、そして自社との相性を慎重に見極めることが極めて重要です。
自社の業種や事業規模、抱えている経営課題に対して、担当税理士が十分な専門知識を有しているか、過去の類似案件での実績はあるかなどを確認しましょう。
また、税理士とのコミュニケーションは長期にわたるため、性格や価値観が合い、円滑な意思疎通が図れるかどうかも、契約を継続していく上で大きな影響を与えます。
面談などを通じて、担当者との相性を見極める時間を設けることが推奨されます。
連絡体制とレスポンス速度
税理士との円滑なコミュニケーションは、迅速かつ的確な税務・経営サポートを受けるために不可欠です。
契約書や契約前の打ち合わせ段階で、通常業務における問い合わせへの対応時間(営業時間内、〇営業日以内など)や、緊急時の連絡方法(電話、メール、チャットツールの指定など)、担当者が不在の場合の代理連絡体制などを具体的に確認しておくべきです。
これにより、いざという時にスムーズに連絡が取れず、機会損失や問題の拡大を招くといった事態を防ぐことができます。
契約期間と解約条件
税理士との顧問契約は、長期にわたるパートナーシップとなることが多いため、契約期間や解約に関する条件を事前にしっかりと確認しておくことが重要です。
契約の自動更新の有無、最低契約期間の設定、解約を希望する場合の予告期間(例:〇ヶ月前までに書面で通知)、解約理由の制限、そして解約に伴う違約金の有無や金額などを明確にしておく必要があります。
これにより、将来的に万が一、契約の見直しや解除が必要となった場合でも、双方の合意に基づいた円滑な移行が可能となります。
顧問税理士との契約で注意すべき点は?
契約内容の不明瞭な点の確認方法
顧問税理士との契約書には、専門用語が多く含まれていたり、業務範囲や料金体系に曖昧な部分が含まれていたりする場合があります。
このような不明瞭な箇所は、後々のトラブルの原因となり得るため、そのままにせず、必ず確認を行う必要があります。
具体的には、契約書に記載されている専門用語の意味を税理士に質問し、納得いくまで説明を求めること、業務範囲の区切り(例:「〇〇に関する相談」の範囲)や料金体系の例外規定(例:追加で発生する可能性のある費用)について、書面での回答を得ることが有効です。
解約時の引き継ぎ事項
顧問税理士との契約を終了する際には、後任の税理士へのスムーズな引き継ぎが非常に重要となります。
契約書には、解約後の具体的な引き継ぎ事項について定めておくことが望ましいでしょう。
例えば、依頼者が作成・保管していた帳簿、決算書、申告書、その他税務関連書類の返却方法や返却期限、電子データの受け渡し方法、そして必要に応じて次期税理士への情報提供(引継ぎ資料の作成など)に関する協力範囲などを明確にしておくことで、事業運営に支障をきたすことなく、円滑な移行を実現することができます。
まとめ
税理士との顧問契約書は、単なる形式的な書類ではなく、信頼に基づくパートナーシップの証であり、経営の安定化と成長を支える重要な基盤となります。
契約の種類、業務範囲、報酬体系、責任範囲といった具体的な項目を契約書に明記し、担当者との相性、連絡体制、契約期間や解約条件などを事前にきめ細かく確認することが、安心して税理士との関係を築く上で不可欠です。
不明瞭な点は徹底的に確認し、万が一の解約時にも円滑な引き継ぎが行えるよう、契約内容を十分に理解し、双方にとって納得のいく条件で契約を締結することが、長期的な事業発展に繋がる賢明な選択と言えるでしょう。