年末調整の時期が近づくと、担当者は例年、従業員への申告書の配布・回収、添付書類のチェック、税額計算、問い合わせ対応など、多くの業務に追われることになります。
こうした煩雑な業務を外部の専門業者に委託する年末調整アウトソーシングは、社内の負担を軽減し、業務を効率化する有効な手段として注目されています。
専門知識を必要とする業務や、煩雑な手続きを外部に委託することで、社内の負担を軽減できるだけでなく、コスト面でもメリットがある場合があります。
年末調整のアウトソーシングで代行できる業務
申告書の回収とチェック
年末調整のアウトソーシングでは、従業員に配布する扶養控除等申告書や保険料控除申告書、配偶者控除等申告書、基礎控除申告書などの各種申告書、および生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書、iDeCoの掛金証明書、住宅ローン控除の残高証明書などの添付書類の回収・チェック作業を依頼できます。
これらの書類について、記載漏れ(例:扶養親族のマイナンバー記載漏れ)、添付漏れ(例:控除証明書の添付忘れ)、記載内容の不備(例:旧住所のまま記載、控除額の計算誤り)がないかを確認し、必要に応じて従業員へ直接修正依頼や督促を行うサービスも提供されています。
これにより、不備のある書類が後工程に進むのを防ぎ、正確な年末調整処理の基盤を築くことができます。
税額計算とデータ入力
回収・チェックが完了した従業員の申告内容を、給与計算システムや指定されたフォーマットへ正確に入力する作業も代行可能です。
氏名、住所、扶養親族情報、各種控除額、源泉徴収税額といった詳細なデータを、給与データと照合しながらシステムに連携させます。
法改正への対応(例:近年の寡婦控除やひとり親控除の改正、給与所得控除の見直しなど)や、給与データに基づいた所得税の過不足額計算なども依頼でき、社内での手作業によるミスリスクを軽減できます。
例えば、数値の入力間違い、計算式の誤り、関数設定ミスといったヒューマンエラーを回避し、法的に正確な源泉徴収税額を算出することが期待できます。
従業員からの問い合わせ対応
年末調整に関する従業員からの個別の質問(例:扶養親族の定義、各種控除の適用条件、申告書の記入方法、配偶者控除や扶養控除の対象となる範囲、住宅ローン控除の適用要件など)や、Webシステム操作方法に関する問い合わせ対応を、専門スタッフが電話やメール、チャットなどで一括して請け負うサービスもあります。
これにより、担当部署が煩雑な問い合わせ対応に追われることなく、本来の業務に集中できます。
専門知識を持つスタッフが、均一で質の高い回答を提供することで、従業員の疑問や不安を迅速に解消し、手続き全体の円滑化に貢献します。

年末調整アウトソーシングのメリット
担当者の負担を大幅に軽減
年末調整業務は、毎年11月から12月にかけて業務が集中し、かつ多くの事務作業(書類の仕分け、データ転記、計算確認、税務署への提出準備など)を伴うため、担当者の業務負担が大きくなりがちです。
アウトソーシングを利用することで、申告書の管理、チェック、データ入力、従業員からの問い合わせ対応といった一連の作業を委託でき、担当者は大幅に負担を軽減できます。
これにより、採用活動の強化、人材育成プログラムの企画・実施、組織開発、人事制度の見直しといった、より本質的で戦略的な業務に時間を割くことが可能になります。
申告ミスを防ぎ正確性を確保
税制や関連法規は頻繁に改正されるため、常に最新の情報を把握し、正確な処理を行うには専門知識が不可欠です。
例えば、年々変わる税制改正の情報に迅速に対応し、正確な所得税額を計算するには、専門的な学習と実務経験が求められます。
アウトソーシングサービスは、年末調整に関する専門知識を持つスタッフが対応するため、計算ミスや申告漏れといったリスクを低減し、コンプライアンス強化にも繋がります。
これは、税務調査のリスク低減や、万が一の追徴課税リスクの回避、ひいては企業イメージの維持向上にも貢献します。
従業員の満足度向上に寄与
年末調整の手続きは、従業員にとっても負担となることがあります。
複雑な申告書への記入、必要書類の準備、不明点の解消に時間がかかること、手続きの遅延による不安など、様々なストレス要因が存在します。
専門スタッフが従業員からの問い合わせに丁寧に対応したり、Webシステムを通じた簡単な申告手続きを提供したりすることで、従業員の年末調整に対するストレスを軽減できます。
手続きがスムーズに進むことは、従業員の会社への満足度向上にも繋がるでしょう。
会社への信頼感やエンゲージメントの向上も期待できます。

年末調整アウトソーシングの費用相場
料金体系は複数存在
アウトソーシングの料金体系は、主に「従業員一人あたりの単価制」と「業務一括での請負制」の2種類あります。
単価制は従業員数に応じて費用が決まり、従業員数の増減に柔軟に対応できるメリットがありますが、従業員数が少ない場合は割高になる可能性も考慮が必要です。
一方、請負制は業務全体をパッケージとして料金設定されることが多く、予算が立てやすい反面、自社で対応できる業務まで含んでしまうと過剰な支払いになることもあります。
その他、月額固定料金制や、利用したオプション機能に応じた従量課金制などを採用する業者も存在します。
従業員数や業務範囲で変動
一般的な目安として、小規模企業(〜50名)では一人あたり2,000円〜4,000円程度、中規模企業(51〜300名)では一人あたり1,500円〜3,000円程度、大規模企業(301名〜)では一人あたり1,000円〜2,500円程度が相場とされています。
ただし、従業員数が多いほど単価が下がる傾向が見られます。
これは、大量処理による効率化や、規模の経済が働くためです。
また、最低受注料金が設定されている場合、小規模企業ではこの最低料金がネックとなることもあります。
依頼する業務範囲の広さ(例:申告書チェックのみか、税額計算まで含めるかなど)によっても費用は大きく変動します。
オプションで追加費用が発生
基本料金に加えて、従業員向けヘルプデスクの設置(一次対応やFAQ整備)、住宅ローン控除申告書の初回チェック(複雑な控除の初期確認)、外国籍従業員の対応(言語サポートやビザ・在留資格に応じた申告サポート)、源泉徴収票や支払調書の作成・発送(従業員や関係者への配布)、給与支払報告書の市区町村への提出代行(eLTAX対応など)といったオプションサービスを依頼する場合、別途費用が発生することが一般的です。
これらのオプションサービスは、特別な専門知識や追加の人員、システム開発などを要するため、追加料金が設定されています。
年末調整アウトソーシングの選び方
自社の課題に合ったサービスを選ぶ
年末調整業務における自社の課題(例:担当者の慢性的な残業、過去の税務調査での指摘、従業員からのクレームが多い、システム化が遅れているなど)を明確にし、その課題解決に最も適したサービスを提供している業者を選びましょう。
Webシステム導入による効率化を重視するのか、手厚い問い合わせ対応を求めるのか、あるいは高度な税務知識による正確性確保を最優先するのかなど、目的に応じてサービス内容を比較検討することが重要です。
提供されるサービスのデモンストレーションを受けたり、トライアル期間を利用したりして、実際の使い勝手を確認することも推奨されます。
セキュリティ体制を確認する
年末調整業務では、マイナンバー、銀行口座情報、家族構成、病歴、住宅ローン情報といった、従業員の個人情報という機密性の非常に高い情報を扱います。
そのため、委託先のセキュリティ体制は極めて重要です。
プライバシーマーク(Pマーク)やISO27001(ISMS)などの外部認証を取得しているか、データ管理方法(例:暗号化、アクセス権限管理、バックアップ体制、データ消去ポリシーなど)や物理的なセキュリティ対策(例:データセンターの入退室管理、監視カメラ、耐震・防火対策など)は十分かなどを確認しましょう。
委託契約における秘密保持義務条項の確認も怠らないようにしてください。
委託範囲を明確にする
申告書の回収・チェック、税額計算、データ入力、従業員からの問い合わせ対応、事後処理(源泉徴収票・支払調書作成・発送、給与支払報告書の市区町村への提出代行など)といった業務のうち、どこまでをアウトソーシングしたいのかを具体的に事前に決めておくことが大切です。
自社のニーズに合致した委託範囲を提供できるかを確認しましょう。
例えば、社内で一次対応は行うが、専門的なチェックや計算は委託したい、といった場合、柔軟に対応できる業者を選ぶ必要があります。
事後処理まで含めるかどうかも、費用対効果を考慮して検討しましょう。
まとめ
年末調整のアウトソーシングは、煩雑な事務作業の負担軽減、専門知識による正確性の確保、そして従業員満足度の向上といった多くのメリットをもたらします。
これにより、企業は人的リソースをより戦略的な業務に集中させることが可能になります。
費用相場は、依頼する業務範囲や従業員数、オプションサービスの有無によって変動するため、自社の課題やニーズを明確にした上で、セキュリティ体制や委託範囲なども含めて慎重にサービスを選定することが重要です。
本記事で紹介した内容を参考に、複数社への見積もり依頼や比較検討を通じて、年末調整業務の効率化と質の向上を実現できる最適なパートナーを見つけましょう。